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Kさん:素敵ですね! パリ音楽院ですか?

 

Hさん:いや、それがまだちゃんとは決まっていないんです。今年の年明けに急に言い出して。入学して最初はのびのびやっていたのですが、2年生になって、あるレベル以上になると上手くなるには自分で目標を作り出していかなければならないということに気づいたみたいなんです。そこで(目標となる)モデル探しを始めて、悩んだようです。東京音大は先生のレッスンを自由に選べるので、フランス人の先生に触発されて留学することになってしまって。フランスにも仕送りすることになりました。パリは危ないと聞きますから、うちでは今は心配で泣いていますよ。

 

Kさん:うちの子は怖がりなんで、留学はないかな……。

 

Hさん:何があるかわからないですよ。本人には「東京音大を中退することは許さない」と言っています! とにかく経験を積んで世界を広げてもらいたいです。

 

Kさん:うちはおっとりしているから、逆にうらやましいです。

 

――将来はどのような活動をしてほしいですか?

 

Kさん:演奏家の道は厳しいと思いますが、うちは転勤が多かったので、ここで落ち着いて練習してほしいです。

 

Hさん:結局音楽の道に進んだ子たちは多かれ少なかれ、親が音楽に興味があって進ませたようなものだと思います。親の応援なしでは無理ですから。もちろん子供も進路では悩むでしょうね。卒業後の就職のこととか……。

 

――最近は音大も就活に力を入れているようですが、一般企業への就職は考えているようですか?

 

Kさん:それもいいかと思います。本人次第ですよね。

 

――もしほかのお子さんがいて音大に行きたいと言ったらどうされますか?

 

Kさん:もしそうなったら国公立でないと無理ですね……。

 

Hさん日本は国立の音楽大学は一校しかないですから。あとは公立。一般大学の芸術コースでは、圧倒的に私立大が多いので、親の財力が問われるのかと。途中で諦める子も多いと思います。「卒業してからも稼げる人は少ない」と言われたら、きついですよね。地方から東京に出て一人暮らしになる場合が多いし、経済的には大変かと思います。うちももう一人の息子が一般の大学に通っているので、年間400万円近くの学費を払うのはとても大変なことです。

 

Kさん:娘が進学した音大は奨学金が充実していたので、助かっています。

 

――音大は、いまだにごく限られた層の方しか進学できないという状況になっているのでしょうか。

 

Hさん:特殊な世界かなとは感じています。

 

Kさんうちの子は剣道部だったし、野球ファンでもあるんですが、音大には野球のルールを知らないクラスメートも多かったらしいです(笑)。

 

――それだけ、音楽だけの世界を歩んできたんでしょうね。

 

Hさん音楽だけでなく、いろいろな世界を広げていってほしいですね。

 

我が子が「音大に行きたい」と言い出した。その時、親はどうすれば?

非音楽家の親御さんが語る音大受験体験記

一般大学と違って音楽大学の受験は、少しだけ特殊? 音楽家であれば体験済みでも、そうでない親御さんは初めての課題に取り組まなければなりません。もちろん、無事合格のあかつきには高額な学費の支払いも待っています。ここでは、子供と二人三脚で音大合格への道を切り開いた方々に、その体験を語っていただきました。

 

K・Nさん(本文中はKさん):東京都在住。都内の音楽高校を卒業後、2017年に都内音大ピアノ科に入学した女子の母

 

H・Nさん(本文中でHさん):東京都在住。普通科の進学高校を卒業後、2016年に東京音大のトランペット専攻に入学した男子の父

■子供が音楽人生をスタート! 高校選びをまずどうする?

――お子さんはどういう経緯で音大に進まれたのですか?

 

Kさん:先生の勧めです。私はあまり音楽に通じていなかったので、子供が音楽の道に進むとは思っていなくて、先生と子供本人の意思でという感じですね。小学校6年生の時に音大の先生を紹介されて、都内の音楽高校の受験を勧められました。それが音大受験のきっかけになりました。

 

Hさん:うちは、小学校の吹奏楽団で息子がトランペットを始めて夢中になりました。普通高校に進ませましたが、ちゃんと勉強していたし、本人の希望どおり、音大進学を認めました。

――音大受験まで付いていた先生との出会いは?

 

Kさん:子供は中学卒業まで地元の新潟にいて、その頃の先生の紹介です。新潟の前は仙台に住んでいてコンクールにも出ていたので、コンクールの指導もできて、自宅からも遠くないという条件で探しました。

 

Hさん:ジュニアオーケストラに入っていたので、その指導をしていた先生に紹介してもらいました。

――ピアノはいつから始めたのですか?

 

Hさん:高1からですね。小学生に混じって、発表会に出たりしてました(笑)。

 

Kさん:幼稚園の年長から。本人の意思です。お友達がやっていて、そのお友達と同じ先生に習いに行っていました。

 

――Kさんはその頃、ここまで続くと思っていましたか?

 

Kさん:全然。でも、そのピアノの先生がこの先何かで役に立つだろうからと、ドイツ語の音名を教えてくれたり、コンクールを受けるよう勧めてくれたりしたことはありました。仙台にいた小学校2年生の時に初めてのコンクール出場で優秀賞をいただきました。新潟に移ってからは、そこの先生が音大の学校案内をくれて、本格的にコンクールを受けるようになりました。うちの子は人前に出たがらないのに、「先生に言われたから出場する」と言って。先生から勧めてくださったのはうれしかったです。

――お子さんがくじけそうかなと思ったときはありましたか?

 

Kさん:新潟にいたとき、東京にレッスンに通い出して、一度だけ熱が出ました。あと高校1年生のとき、環境が変わったせいか、レッスン前に腹痛が出たり、具合が悪くなった時期がありましたが、高校の先生に、「焦らずゆっくり」というアドバイスをいただいたり、力になってもらったりして乗り越えました。

Hさん:うちの子は音大に行くことについては、ぶれたことはないです。

――Hさんは、普通高校でいい成績を取った上で、音大に行くように息子さんを説得されたんですね。

 

Hさん:音楽高校に行きたがっていましたが、いろいろな経験をしてもらいたかったので、普通高校に行かせました。息子は怒ってましたが、「普通の勉強もちゃんとやったほうが将来音楽の道に進むにも役に立つはず」と、なんとか言いくるめました(笑)。

 

――普通高校に進学するメリットはどういうところだと思いますか?

 

Hさん:先生や音大生など年上の演奏家と触れる機会が多かったことだと思います。管楽器は、ピアノや弦、声楽と違って、ジュニアコンクールがあまりなく、自分の位置を確かめる機会が少ないですから。吹奏楽はさかんですが、プロを目指す子は少ないです。

 

――Kさんは音大受験についてどうお考えでしたか?

 

Kさん:私はもっと軽く考えていました。中学の時は運動部でしたし、地方にいたので条件は厳しいし、音大はまあ受かればいいかなという感じでした。大変だったら途中で諦めるか、志望校を変更するかと思っていましたが、結局諦めず……。

■親のお悩みは音大の学費だけじゃない。先生探しと情報収集の方法は?

――音大はお金がかかるというご心配はありましたか?

Kさん:はい。新潟から東京の先生のところに通うだけでも大変です。それと、都内の高校に進学を希望していたので、家探しは大変でした。都内の音楽高校は都内に保護者と住むことが原則と聞いていたので。主人の勤め先の借り上げ社宅はグランドピアノ不可のところが多くて。

 

Hさん:どんな楽器でも、演奏できる部屋の確保が1番の問題ですね。

Kさん:うちは見切り発進してしまって、反省しました。やっと見つけたグランドピアノ可の社宅は子供が高校生までしか住むことができないことがわかり、受験前に引っ越しました。

 

Hさん:うちは戸建てだったので、一部屋を防音室にしました。学校の始業前に教室を使わせてもらったりもしたのですが、自分が吹きたい時に自由に練習できる環境を作ってあげたかったので。

 

――一般の人は「音大に進学すると学費にお金がかかる」とまずは思うのですが、学費だけがお悩みではないことがおふたりのお話を伺ってわかりました。

 

Kさん:そうなんです、それこそ衣装とかコンクールの受験料とか……。

 

Hさん:レッスン料も。うちは男なので、衣装代はかからなかった(笑)。でもあるレベル以上を目指すとなると、練習時間も長くなるので場所の確保は本当に考えさせられました。大学に入ってもそれは続きますから。夜中までやっています。練習は大切ですよ。

 

Kさん:ソルフェージュは高校の授業にあるから大丈夫と思っていましたが、うちの子はあまりやっていなかったので、別の先生に付くことになってレッスン代がかかることになりました。大学進学後も通っているくらいよい先生だったので、結果的にはよかったのですが。

 

――Kさんのお子さんは推薦入学ですが、どのように勉強されたのですか?

 

Kさん:本当に先生におまかせで……。音大の先生と高校の先生、ソルフェージュの先生もいましたし。あとは学校のクラスの親御さん有志でホールを借りて、練習させたりとか。

 

――そういう点で音楽高校はいいですね。

 

Hさん:同じものを感じながら生活できていいですよね。うちは普通高校で進学校だから、音大を目指している子なんていませんでした。

 

――Kさんは親御さん同士で学費のことなどの情報交換もできたわけですね。

 

Kさん:そうした情報も、どういう先生に付くかによって、いろいろ違うんです。

 

Hさん:楽器によっても随分違いますよね。ピアノはお金がかかりますが、管楽器はお金がかからない方です。芸大なら学費が3分の1で安いからいいですけど。私立は年間200万円オーバーですから。

 

――おふたりともお仕事は音楽関係ではないとのことですが、先生以外からはどのように情報を集めたのですか? 

 

Kさん:先生のお弟子さんで音大に進まれた方にお聞きしたりはしました。

 

Hさん:情報集めには苦労しました。音大受験は一般大学のように情報がないし、雲をつかむような感じでした。

 

Kさん:本当にそうですよね。受験時はホールで先生方の前で演奏するのですが、本当に緊張したそうです。それを克服する本番体験みたいなものの指導をしてもらいました。普通の演奏会とは全く違うんです。

 

Hさん:息子も独特な雰囲気だと言っていました。

 

Kさん:ピアノも自分の楽器ではないし。

 

Hさん:自分が音楽業界におらず、人脈もないといい先生を探すのも判断するのも難しく、そこにはすべての能力を注ぎ込んで考えました。先生はたくさんいるんですけどね。子供をどういうレベルに持っていくか、どのような目的をもって、どのように指導していくかをはっきりを言えることが先生を選ぶ判断基準になりました。必死で探しましたが、人との繋がりが一番でした。うちはジュニアオーケストラの指導の先生方のほかに、楽器屋さんですね。管楽器なので。

 

――おふたりとも、いい先生を探すのは苦労されたということですね。音大受験でほかに気がついたことありますか?

 

Kさん:音楽の世界は狭いなと思いました。うちのピアノ可のマンションにピアノの先生のお知り合いが住んでいたりとか。

■音大に合格! これからは子も親も実力が試される

――無事に音大に入学されて、まずは一段落ですね。お子さんたちはどんな学生生活を送っていますか?

Kさん:音大の演奏会に行ったり、いろいろと忙しそうです。

Hさん:管楽器の学生は副科のピアノに苦労してます。忙しくするかどうかは本人次第ですよね。学外の演奏活動もしたり。でも、実は息子は昨日フランスへ旅立ちました。留学というか、一旗あげようかというか……。東京音大を休学して。

【参考情報】

手引書『音大受験生のための受験便利帳』

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